「やった!ありがとう!」
念願の長椅子に座って、VサインのKさんご夫妻。
この3ヶ月、まさにいっしょにつくったこのスペシャルオーダー長椅子。
「麻朝和椅子のびのび・3P」
親愛のキモチをこめて、「クマちゃんの長椅子」と呼ばせていただきます。
クマちゃんの長椅子物語。
半年前に新築の家を手に入れたクマちゃん。
何事にも、調べて、見て、深めるマニアックな人。
「木を生かしてて、低めで、寝れて。。。」
家に似合う、自分好みのソファを、いろいろ調べて、見に行って、
ついにOツカカグで買った、3人がけのソファ。
だがしかし、
いざ納品となると、階段から入らない!
つり上げも「イヤ〜無理っす」と拒否され、あえなくキャンセル。
階段から入る、オレ好みの分割ソファをさがし、
日本中の家具屋を調べ、横浜中の家具屋をまわり、
目黒通りを端から端まで歩き、
「このソファ、もう少し小さくできますか?
分割してつくれませんか?」
とセミオーダーを頼んでも、
「できません。」
「デザイナーがだめというので。」
「工場ができないというので。」
どこもやってくれなかった。
「家具屋って、なんて融通の利かないやつらなんだ。」
と思っていたそうです。
5月末、
「ダメもと」で、いちばん近くにあった、横浜BC工房へ。
「オモシロいですね。やりましょう!」
「灯台下暗し。今までこんなに探してきたのに、
つくってくれる家具屋がいちばん近くにあったよ!」
すぐに絵を描き、クマちゃんと相談。
ちょうどジャワの工房にいた、ボスとデザイナーのマーサに相談すると、
「オモシロいテーマじゃないか。スグつくるよ!」
ノリノリで、フレームがほぼでき、よろこびのメールが来ました。
一方、クマちゃんは、張り地をマニアックに追及し始めました。
渡したスケッチを何枚もコピーして、色や素材を考えて、絵を描いては、
あーでもない、こーでもない。
クマちゃんは、釣り船の船頭さん。
『「海が好き」とかいうヤツ嫌いなんだよね〜』といいつつ、
椅子は、白と青のさわやかなイメージ。
「生成りの帆布(はんぷ)と、「藍染め」の帆布でつくりたい!」
毎日パソコンを占拠して、帆布と藍染の勉強をつづけたそうです。
岡山の倉敷帆布を取り寄せ、
藍染めの原料、藍を発酵させた「すくも」を取り寄せ、
合羽橋で、でかいズンドウ鍋を買い、
自宅で、帆布を洗い、煮出し、
家じゅうを「すくも」のにおいでいっぱいにさせながら、
自分の手で、「藍染め」をしました。
16回も染めて、定着する処理をして、さらにはインディゴもつかい、、、
奥さんにあきれられながらも、
クマちゃんの藍染めモードは深まっていきました。
8月。
長い船旅を経て、長椅子のフレームと、下張りができました。
クマちゃんご夫妻、ふじのの工房へ来てくれました。
自分の手で染めた藍染めの帆布を持ってきてくれました。
「いいね!バッチリじゃない!」とフレームの仕上がりにVサイン。
そして、ふじの藍染めの旅へ。
茶畑が広がる、藤野でも別世界の佐野川地区。
ここに藍染め作家のブライアンさんの工房があります。
ブライアンさんは、築120年の古民家を改装して、
工房、家、ゲストハウスにしています。
3階建ての古民家で、蚕を飼い、桑を育て、糸を取り、
糸を紡いで、糸を染め、機織り機で織って、いろんな布をつくっている。
現代に真っ向から対立するような、
素材を育てるところからの手仕事をしています。
海外から、研修生を受け入れてワークショップをしていて、
その日は、アメリカ、イギリス、ロシア、フランス、、、いろんな国の人たちが、
佐野川の古民家で、藍染めや、織り物をしていました。
ここは、いったいどこ?ジブリの映画の異空間に迷い込んだようでした。
うちのボスに新作の古手ぬぐいのパッチワーク袈裟を見せて、
「イイでしょ。ガイジンに高く売るよ〜」とジョークを飛ばすアーティスト。
秘伝の藍染めのカメ。持ってきた帆布を漬けて、上げて、酸化させて、
を繰り返します。
できました!
藍染めができただけでなく、ちょっと不思議ないい夏休みの旅になったそう。
いよいよ、藍染めの帆布、生成りの帆布をつかっての、「張り」。
裁断・縫製も、代わりのない布だけに、緊張です。
張る途中で、縫製をやり直したり、
スタッフもみな、いいモノにしよう!というキモチがでてきます。
完成まじか。
右アーム、アームなし、左アーム、それぞれ3つの椅子が、つながります。
1人がけにも、2人がけにも、3人がけにもなる、セパレート3P長椅子。
搬入も階段からラクラク。今の住宅事情にもあった、セパレート長椅子。
いいテーマをカタチにできました。
寝てもイイね!
この3か月、椅子にすっかりハマっていたクマちゃん。
奥さんからは、
「カタチになってよかった。ホントわがままばかり言ってごめんなさいね。」
いえいえ、違います。
クマガイさんは、全然「ワガママ」ではありません。
「お客さん」であるクマガイさんは、
「無理なこと」を一切押しつけませんでした。
ご自分で考え、絵を描いて、調べて、取り寄せて、
藍染までやって、ふじのまで来てくれて。
自分の熱い思いは、行動で示して、
つくる側の意見を尊重して、受け入れてくれました。
こんな人は、なかなかいません。
「つかい手」と「つくり手」が「いっしょに考え、いっしょにつくる。」
BC工房は、ずっと、そういうモノづくりを目指しています。
この「クマちゃんの長椅子」は、
「いっしょに考え、いっしょにつくった。」
BC工房にとっても、とてもうれしいモノづくりができました。
それにしても、クマガイさんの「探求力」には脱帽です。
モノづくりにいい刺激をもらいました。
こちらこそ、ありがとうございます!
BC工房
KAZU